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第二部『狂乱の黒炎』

ツキノワ 第25話「灯の民の遺跡」

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集落を抜けてさらに南へ数日、地平線に、崩れた石柱の列がぼんやりと見えてきた。近づくにつれ、それが人の手による建造物だとわかった。風化した壁に、見慣れない文字の断片が刻まれていた。

「灯の民の遺跡……本当に、あったのか」

ミシャラが、声を落として言った。四人は、崩れた門の前で足を止めた。

◆

門をくぐったところで、一人の老人が姿を現した。灰色の外套を纏い、手には小さな灯りを提げていた。

「久しいな、訪れる者は。……四里の盟の使いか」

老人は名乗った。

「カガリだ。ここに残った、最後の一人だ」

灯の民最後の一人、カガリとの出会い

灯の民が、まだ生きていたという事実に、四人はしばらく言葉を失った。カガリは、その反応を見慣れているのか、静かに先を歩き始めた。

「案内しよう。何を探しているのかは知らないが、答えらしきものは、この奥にある」

◆

遺跡の奥、崩れた回廊の壁に、無数の記録が刻まれていた。カガリが灯りを掲げると、古い文字の連なりが浮かび上がった。

「これは……」

「マニャという者たちのことだ。焦げの時、大罪を犯した仲間を、身を裂いてでも封じた者たち。……そして、その一部から生まれた、最初の『器』のことも」

マニャと器の起源の記録に、思わず自分の顔に触れるショウ

ショウは、思わず自分の顔に触れた。器、という言葉の重さを、これまで以上に強く感じた。

「器は、なぜ生まれたんだ」

「さあな。ここにあるのは、断片だけだ。全部が残っているわけじゃない」

カガリは、そう言って首を振った。

◆

回廊の奥、ひときわ古い一枚の壁画の前で、リオが不意に足を止めた。二人の人影が、寄り添うように描かれた壁画だった。片方は丸い輪郭、片方は、それを守るように立つ姿だった。

「……リオ?」

古代の壁画の前で不意に足を止め、動揺するリオ

呼びかけても、リオは動かなかった。壁画を見つめる目が、ひどく遠いところを見ているようだった。

「なんでもない。……古い絵だな、というだけだ」

いつものように、はぐらかす声だった。だが、その声はわずかに震えていた。ショウが見た限り、リオがこれほど長く、一つの絵に見入ることは、これまで一度もなかった。

「何が、描かれているように見える」

思わず問うと、リオは長い沈黙のあと、ようやく口を開いた。

「……さあな。俺にもわからん」

答えにならない答えだった。それでも、ショウはそれ以上を問わなかった。カガリだけが、その様子を、何かを察するように静かに見ていた。

(第26話「翳る眼」へ続く)

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