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第三部『銀月、還る』

ツキノワ 第40話「調律者」

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記録者の後を追うように、今度は導師と名乗る者が、渦の淵の見張り小屋を訪れた。老いた面差しに、深い静けさを纏っていた。

「調律者、という言葉に、聞き覚えは」

導師が、静かに切り出した。ミシャラが頷いた。

「転生の儀を司る者、とだけ伝わっている。正体は、誰も知らない」

「その正体を、今日はお話しします」

◆

「はるか神話の時代、完璧なる魂と器と呼ばれる者たちが、およそ百体、存在していました」

導師の声は、遠い時代を辿るように、ゆっくりと進んだ。

「その魂を、然るべき器へ送り届ける役目のために生まれた者——それが、調律者です」

ショウは、その一言に、なぜか強く胸を突かれた。理由のわからない既視感が、体の奥から湧き上がった。

◆

「その百体は、今もいるのか」

ショウが問うと、導師は、しばらく黒く沈んだ目でショウを見つめた。

「多くは、既に姿を消しました。……ですが、幾つかの魂は、今もこの世界の、ある場所を巡り続けています」

「ある場所、とは」

「それも、いずれお話しします。まだ、順序があります」

その慎重さに、ショウはもどかしさを覚えたが、それ以上、問い詰める言葉を持たなかった。

◆

「一つだけ、お伝えしておきます」

導師は、去り際に、そう言った。

「調律者と、私ども七静の衆は、深く関わりのある者です。……その関わりの中身も、いずれ明かされる日が来ます」

それだけを残し、導師は静かに姿を消した。

ミシャラが、深く息を吐いた。

「少しずつ、輪郭が見えてきている。……だが、まだ、核心には触れていない」

ショウは、何も答えなかった。ただ、胸の奥の既視感だけが、いつまでも静かに疼き続けていた。

(第41話「器の記憶」へ続く)

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