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第三部『銀月、還る』
ツキノワ 第42話「扉の正体」
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導師と記録者が、三度目に姿を見せたのは、渦の淵の見張り小屋だった。今日こそ、核心に触れる予感があった。ミシャラは、いつもより硬い顔で二人を迎えた。
「渦の淵の正体を、話していただけるのか」
導師は、静かに頷いた。
◆
「渦の淵は、月の裏側——黒炎の魂を持つ種族が住まうとされる領域——へ通じる接点です」
その一言に、ミシャラの体が、わずかに震えた。九百年、その奥を見つめ続けてきた者にしか分からない重みが、そこにあった。
「九百年、私は何を守っていたんだ」
ミシャラの声は、静かだったが、深い震えを帯びていた。
◆
「地上と、月の裏側を隔てる封印そのものです。あなたは、誰よりもそれを正しく守り続けてきました」
導師の言葉に、ミシャラは何も答えなかった。ただ、長い沈黙だけが、その場に満ちた。
「では、精霊界というのは」
ショウが、ふと口にした言葉に、導師が初めて目を見開いた。
「その名を、どこで」
「……分からない。ただ、なぜか、口に出てきた」
◆
導師は、しばらく黙り込んだあと、ゆっくりと頷いた。
「精霊界は、この世界とは対極にある領域です。黒炎の魂を持つ種族を、唯一討てる力を持つとされています」
その名を口にした瞬間、ショウの中で、これまでのどの伏線よりも強い予感が、確かな形を取った。理由はまだ分からない。それでも、その言葉が、自分にとって、ただの新情報ではないことだけは、はっきりと感じられた。
九百年守られてきた渦の淵は、ついにその正体を明らかにした。だが、その先には、まだ誰も踏み込んだことのない、さらに深い問いが待っていた。