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第三部『銀月、還る』
ツキノワ 第43話「禁忌の真意」
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渦の淵の正体を知った数日後、東の歌合の会から、老いた歌い手が再びショウたちのもとを訪れた。手には、第32話で見た第七連の写しがあった。
「七静の衆から、正式に連絡がありました。……この一節の、続きを開示してもよいと」
一室に、静かな緊張が走った。
◆
導師が、その場に同席していた。
「第七連は、ただの禁忌の歌ではありません。……精霊界にも、月の裏側にも、共に呼びかけ得る歌です」
「両方に、というのは」
「この地の内側にはとどまらない声だからです。迂闊に歌えば、渦の淵の封そのものを刺激しかねない。ローエン殿が、生涯歌わずに守り抜いたのは、そのためです」
◆
老いた歌い手が、震える声で言った。
「では、ローエン様は、これが何をもたらすかを、ご存じだったのですか」
導師は、静かに頷いた。
「ある程度は。……ですが、確かめる勇気を、最後まで持てなかったのだと思います」
その一言に、ショウは、遠い日の記憶を思い出した。禁忌の地の奥、リオを失ったあの日、精霊にすがろうと足を踏み入れた場所——あの掟の重さの正体が、ようやく形をなした。
◆
「この歌は、今、使えるものなのか」
ミシャラが問うと、導師は首を振った。
「使い方を誤れば、渦の淵の封を破ることにもなり得ます。……ですが、正しく使えば、精霊界へ道を通す鍵にもなり得る」
その言葉に、ショウの中で、何かが静かに動いた。精霊界へ道を通す鍵——その響きが、なぜか、自分自身の奥深くにある何かと呼応するように感じられた。
禁忌にされた本当の理由は、ついに明らかになった。それは終わりではなく、次の扉を示す、新しい鍵の姿をしていた。