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第三部『銀月、還る』

ツキノワ 第46話「精霊界へ」

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「リオの魂の曇りを晴らすには、精霊の力が要ります」

導師の言葉に、ショウは顔を上げた。

「精霊界へ行けば、その力が手に入るのか」

「はい。ですが、道は、容易くはありません。……そして、あなた自身にも、覚悟が必要です」

◆

「覚悟なら、とうにできている」

ショウが即答すると、導師は、わずかに目を細めた。

「かつて、あなたは一度、精霊にすがろうと禁忌の地の奥へ分け入ったことがある。第七連の禁を破って」

「……なぜ、それを」

「七静の衆は、古くから、あなたの魂の歩みを見てきました。あの時と同じ道を、今度は正式な導きの下で辿ることになります」

ショウは、あの日、リオを失った直後に禁忌の地の奥へ踏み込んだ夜のことを、思い出した。何も知らずに歩いたあの道が、今、こんな形で繋がるとは思わなかった。

◆

「行く前に、伝えておくべきことがあります」

導師は、静かに続けた。

「精霊界で目にするものは、あなた自身の、これまで知らなかった過去です。……それを受け止める心の強さも、この旅には必要です」

「怖くはない」

ショウは、迷わずそう答えた。だが、その声の奥には、確かに、小さな震えがあった。導師は、それに気づいたようだったが、何も言わなかった。

◆

遠くで剣の交わる音が絶え間なく響く中、ミシャラと、返り血と煤にまみれたカイが、詰所の門前まで駆けつけた。防衛線は、まだ持ちこたえている最中だった。

「ここは俺たちが持たせる! 必ず戻ってこい!」

カイが叫ぶように言った。癒えきらぬ肩の傷を庇いながらも、剣を握る手に迷いはなかった。

「見つける、と言った。……その約束は、まだ生きている」

ショウが答えると、カイは短く頷き、すぐに戦線へ取って返した。ミシャラは、何も言わず、ただ深く頷いた。

七静の衆の導きで開かれた道は、これまで誰も通ったことのない、静かな光の帯だった。ショウは、その光の中へ、一歩、また一歩と、迷いなく踏み出していった。

(第47話「百の魂」へ続く)

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